SSブログ

歌の楽器、バイオリン [音楽の話題]

ズーカーマンの、日本人は歌わない、という言葉で、思い出したことがあります。
私に付き合って一緒に演奏にしてくれるソプラノの方が、是非、歌曲は最初に歌で聞いてほしい、と言っていたことです。私が歌曲を演奏することもあり、それを聞いていたりしているので、やはりその演奏では歌が足りないと感じたのかもしれません。歌よりも表現力が足りないのは自覚ありでした。

確かに、声楽とバイオリンは異なると勝手に思い込んでいて、歌うようには演奏せず、弦楽器の曲として演奏していたのです。もちろん、日本で売られている多くの名曲集のようなバイオリン楽譜の中の歌曲からの編曲は歌とは関係ないスラーなどがあって、フレージングも異なり、完全に声楽と弦楽器を別のものとしているのですが、だからと言って、ここから演奏では別の演奏にして良いということはありません。勝手な解釈です。もちろん、私は声楽と同じ楽譜を演奏する場合は、そういう編曲ではなく元の声楽に則ってフレージングしてましたが。それならもっと悪いことになります。

有名な「歌の翼に」の編曲バージョンを、久しぶりに弾いてみました。声楽と同じように歌うことを心がけて、そうすると全く違う景色が見えてきました。やはり歌が足りなかったと思いました。私は旋律を弾くことが大好きで、おそらく他のバイオリニストと同じく、自分の弾く旋律は自分独自の演奏になり、聞き飽きた人にも聞いてもらえると思っていましたが、それでさえ足りないものでした。つまりどこかで声楽とは違うから歌い方も違うと勝手に思い込んでいたのです。ズーカーマンが言っていた、バイオリンは弦の楽器ではなく、歌の楽器だという言葉はまったく適切な言葉なのです。

また、もう一つ思い出したことがあります。
昔、ある有名なバイオリニストが外国でサン・サーンスの第3番の協奏曲を演奏した時です。翌日、新聞に、第二楽章の美しい旋律をなんてつまらなく弾くだと評が載ったそうです。そのバイオリニストは評論家は楽譜にsimpliceと書いてあるのを知らずに、こういう評を書いたのだろう、と言っていました。若かった私の考えはかなり積極的で、simpliceと書いてあるならば、聞く人がそう感じるように弾くことはできないのだろうか、というものでした。ウィニアフスキーの第2番の協奏曲の第二楽章の冒頭も同じくsimpliceです。そして私の大好きなイダ・ヘンデルはそれを美しく歌っています。

サン・サーンスやウィニアフスキー、このsimpliceを美しく歌えたら、初めて、歌う楽器のバイオリンを弾いていると言えるのだろうと思います。


宣伝
「バイオリン演奏 独学のすすめ」のご案内
ヤフーオークションフリマ
https://page.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/v575540131?notice=clols
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:音楽

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。